作業療法士は、OT(オキュペーショナル・セラピストの略)とも呼ばれています。病気やケガなどが原因で、身体に障害を抱える人に対して、医師の指示のもとで、リハビリテーションを行う職業ですが、最近は、介護業界にも活躍の場が広がっています。
介護分野においては、病気や怪我、加齢などにより心身の機能が低下した高齢者に対して、食事、排泄、入浴といった日常生活を送るうえで必要になる能力を高めるための訓練を指導するのが、主な役割となります。
高齢者なので、あまり負荷が高い運動は出来ません。そこで、趣味活動や手作業などを取り入れるなど、その人に合ったリハビリメニューを看護師や介護士と相談しながら組み立てて、そのうえで作業訓練を指導していくことになります。
普通に体を動かすこと自体、大変なことである高齢者にとって、リハビリというのは極めて難しいことであり、途中で諦めてしまう人も少なくありません。そうならないように、精神的なケアを行うことも、作業療法士にとっての大きな役割となります。
一般的には、理学療法士が運動能力の回復を行った後に引き継いで、その人にとって、必要な作業療法を提供していくケースが多いです。具体的な内容は、一人一人違ってきますが、洗濯物を干す、料理を作る、食器を洗うなど、日常的な動作や活動をベースにすることが多いです。
リハビリは個別に行うのが基本ですが、利用者を集めて、園芸や織物、将棋、体操といった動作を集団で行うこともあります。
作業療法士になるために必要な資格
作業療法士の職に就くためには、国家試験に合格しなければいけません。受験資格を得るには、養成学校で3年以上学ぶことが必須となりますが、理学療法士の有資格者であれば、養成学校で学ぶ期間は2年以上で済むことになります。
毎年、約90%以上の受験者が合格しており、この数字だけを見ると、それほど難しくないように思えるかもしれませんが、決してそんなことはありません。養成学校での成績次第では、実力が足りないと判断され、学校側から受験資格を与えてもらえないこともあります。
つまり、合格率というのは、『この人であれば、合格するだけの実力がある』と客観的に認められた人のなかでの数値となるので、そう考えると、10人に1人が落ちるというのは、簡単な試験と楽観視出来るものではありません。
資格を取得するということは、現場で実際にリハビリ訓練を指導するようになるということですから、強い責任を背負うことになります。そう考えると、どれだけ勉強しておいても損はありません。合格した後のことも見据えて、出来る限りの準備をして、試験に臨むようにしましょう。
作業療法士が働く職場
作業療法士の6割は、一般病院やリハビリテーションセンターなどの医療機関で働いています。残りの4割が、福祉関連施設や介護施設など、医療機関以外の分野において活躍しています。
現状では、介護施設で働く作業療法士というのは、まだまだ少数派ですが、高齢化社会に伴い、年々、介護施設におけるニーズが高まっているので、今後は、介護分野が作業療法士にとっての主要な勤務先となる可能性が大です。
作業療法士の給与
作業療法士の平均月給は、約25万円程度。平均年収は賞与を含めて、約400万円程度です。専門職のわりには低水準ですが、これは年々、作業療法士の数が増えていて、全体的に、まだ経験年数が少ない人が多いということが、背景にあります。
経験豊富なベテランだと、600万円以上の年収を得ているケースが珍しくないので、キャリアを積み重ねていけば、高給与は十分に期待出来る職種です。なお、現在の状況としては、高齢者施設よりも、病院などの医療機関のほうが、給与の水準は高めです。
また、作業療法士の大半は正社員として働いていますが、稀にパート・アルバイト、派遣社員として働くような機会もあります。その場合、給与は時給制となり、2000円前後で設定されることが多いです。
作業療法士になるために必要な資質・特性
作業療法士は、身体に障害や不安を抱えている人をサポートする職業なので、相手の心情を思いやって、悩みに寄り添える気持ちを持つというのが、この仕事をこなすうえで、何よりも大切なことです。
そのため、月並みな言い方になりますが、優しさというのが、作業療法士にとっては、最も重要な資質と言えます。
また、作業療法では、患者さんの趣味を取り入れたりするので、どんなことにでも興味を持って、患者さんと一緒に楽しめるような好奇心を持てるかどうかというのも、作業療法士にとっては、重要な特性です。