ケアマネージャーは、『介護支援専門員』とも呼ばれる職種です。介護保険の利用者が適切なサービスを受けられるように介護プランを策定、同時に、そのプランが円滑に実行されるように、スタッフとの連絡・調整を行うのが、主な役割となります。
高齢者が在宅で介護保険のサービスを利用する時に、最初に接することになる存在であり、重要な役割を担うことになります。
ケアマネージャーの資格形態
ケアマネージャーは国家資格ではありません。介護保険制度内のみで適用されている資格です。受験資格を得るには、介護の現場で5年以上働くことが必要とされており、ハードルが高くなっている資格です。
利用者の生活に密着して相談を受けたり、アドバイスを行うことが求められる仕事なので、自身が介護現場で経験を積んで、介護サービスが実際どのように行われているのかを、正確に理解しておく必要があるためです。
それだけに、ケアマネージャーの資格を保有しているということは、実務経験・スキルを豊富に有していることの証明にもなり、ヘルパーや介護員として働く時にも、給与が優遇されるなど、高い評価を得ることが出来ます。
なお、ケアマネージャーの業務を5年以上経験した後、一定の研修を受けると『主任ケアマネージャー』という上位資格を得ることが出来ます。地域のケアマネージャーのまとめ役的存在となる専門職であり、ケアマネージャーの指導・育成が主業務となります。
また、ケアマネージャーからの相談に対応することも重要な役割となります。平成18年に新設された新しい職種ですが、ケアマネージャー全体のスキル向上を担うため、大きな期待が寄せられています。
また、一定用件を満たすことによって介護報酬に加算が付く特定事業所加算制度では、主任ケアマネージャーを在籍させることが必須条件となっているので、介護報酬の加算資格を得るために、介護施設はケアマネージャーを雇用しなければいけません。
公的機関である地域包括支援センターも、専門職員として主任ケアマネージャーの資格取得者を、担当区域の介護保険第1号被保険者(65歳以上の人)の数に応じて配置しなければならないので、あらゆるところで必要とされる存在となっています。
一方、そう簡単には取得出来ない資格であるため、人材が不足しており、主任ケアマネージャーを募集する求人需要は活況です。完全な売り手市場なので、自分を高く売り込むことが出来ます。
主任ケアマネージャーの資格取得者に対しては、主任介護支援専門員研修修了証明書が発行されていますが、2016年度からは有効期間が設けられ、5年ごとに主任介護支援専門員更新研修を受けなければならなくなっています。
ケアマネージャーの仕事場
ケアマネージャーの勤務場所としては、在宅介護が最も需要がありますが、先ほども触れたように、介護保険法において、介護施設には、ケアマネージャーの配置が義務づけられているため、介護施設での仕事も存在します。
在宅介護での仕事内容
在宅介護においては、ケアマネージャーは居宅介護支援事業所に所属することになります。可能な限り、利用者が住み慣れた自宅で自立した生活を営むことが出来るように、支援していくことが役割となります。
利用者が自立を目指したり、生活環境を維持していくために、地域にある介護、医療、保健、福祉の各サービスを総合的に、かつ一体化させながら、効率的に提供されるようコーディネートしていきます。
ケアマネージャーの具体的な業務は5ステップ
ステップ1:相談業務
ケアマネージャーの業務は、利用者から相談を受けた時点から始まります。利用者から話を聞いて、困っていること、介護サービスに求めていることを把握すると同時に、話し合いを通じて、利用者との信頼関係を構築していきます。
ステップ2:問題を把握して、目標を設定する
相談内容から、利用者が抱えている問題の原因を把握、利用者と話し合いながら、原因を解決するための課題や目標を見つけていきます。
ステップ3:居宅サービス計画書の作成
個々の相談者に合わせて、ケアマネージャーは『居宅サービス計画書』を作成します。居宅サービス計画書というのは、利用者が自立を目指して生活を行っていくうえで、必要な介護サービスを適切に利用出来るように、介護プランの内容をまとめたものとなります。
ケアマネージャーは、本人や家族の意向を踏まえつつ、利用者の健康状態や置かれている環境にあった介護サービスを選択、利用者の生活利便性の改善、身体機能の向上などに配慮して、計画を作成していきます。
4.居宅サービス計画書の説明と同意
居宅サービス計画書の原案が出来たら、利用者や家族に提示して、内容に関する説明を行い、必要に応じて、計画を修正していきます。計画内容について、同意を得ることが出来たら、必要な介護サービスの手配に取り掛かります。
5.介護サービスの開始とモニタリング
介護サービスが開始した後も、ケアマネージャーは継続的に利用者の生活状況をモニタリング、居宅サービス計画書通りに介護が行われているか、定期的に確認します。同時に、居宅サービス計画書で設定した介護サービスの内容が現状に即したものになっているかどうかもチェックします。
利用者の心身状態は、常に変わるものです。介護サービスにより、自分で出来ることが増え、介護サービスを減らせることもあれば、追加で必要となるサービスが出てくることもあります。状況に応じて、介護プランを修正していくことになります。
調整が必要な時には、利用している介護サービスの担当者を集めて、サービス担当者会議を開きます。このサービス担当者会議の手配、取りまとめもケアマネージャーの重要な仕事になります。
介護サービスの内容が変更になれば、新しく居宅サービス計画書を修正作成、利用者や家族に説明を行うことになります。
ケアマネージャーの業務は主にこの5ステップの繰り返しとなります。
介護施設での仕事内容
介護施設のケアマネージャーも在宅介護と同じように、介護計画書の作成や入居者の生活支援を行います。
在宅介護との違いとしては、介護施設にはソーシャルワーカー的な働きをする生活相談員という職員がいるので、ケアマネージャーは、この生活相談員と連携して相談業務を行うことになります。
協力出来る存在がいるということで、そういった意味では、在宅介護よりも、精神的な負担(プレシャー)は軽減され、取り組みやすいと思います。
ケアマネージャーには事務的管理能力も必要
ケアマネージャーは介護保険制度内での業務となるので、介護保険制度の内容を正しく理解することはもちろん、要介護認定の見直しや更新など、書類上の手続き方法についても把握しておく必要があります。
また、居宅サービスに必要な費用計算も、ケアマネージャーの重要な業務になっています。介護サービスの料金は介護報酬として、介護保険制度において定められています。介護度ごとに支給限度額が決められており、支給限度額内であれば、利用者の負担は1割又は2割で済みます。
ケアマネージャーは居宅サービス計画書を作成する時に、支給限度額を超えない範囲内で、必要な介護サービスをコーディネートしていきますが、居宅サービス計画書はあくまでも予定なので、毎月末に、各介護サービスが実際に提供した実績を集計して、費用を算出することが必要となります。
介護保険の請求は月末締めの1ヶ月単位で行われるため、ケアマネージャーは毎月、翌月分の居宅サービス計画書と介護サービス利用料金の予算計画を立てることになります。
良いケアマネージャーになるには
利用者の自立に向けて、適切な計画を策定すること、利用者との信頼関係を築いていくことが、ケアマネージャーにとっての最も大切な役割となりますが、介護には正解はありません。現場の状況を見ながら、その都度、適切な方法を選択していくことになります。
そのため、ケアマネージャーは毎日悩みながら最善の方法を考えているものです。利用者の生活を支援しているわけですが、人生の先輩が利用者であり、彼らの声に耳を傾けることが重要です。決して、自分が上の立場にあるとは思わないことです。
自分自身の経験だけではなく、誰からも教わる姿勢を忘れないことが、良いケアマネージャーになるための近道です。