介護施設の種類は大まかに分けて、介護保険が適用される「介護保険施設」(利用者が介護保険を利用してサービスを受けることが出来る施設)、介護保険が適用されない入所施設(利用者が費用を全額負担する施設)に分けることが出来ます。
介護保険施設は在宅介護型施設と入所介護型施設があり、施設を利用するためには、利用者が介護認定を受けていることが前提となります。介護保険が適用されない入所施設には、「養護老人ホーム」、「グループホーム」、「有料老人ホーム」、「サービス付き高齢者向け住宅」などがあります。
介護施設は一般的に「老人福祉施設」とよばれ、社会福祉法人が運営する特別養護老人ホーム、介護老人保健施設や民間企業が運営する有料老人ホームなどがあります。
社会福祉法人運営と民間企業運営では、施設管理者になるまでのハードルの高さに大きな違いがあります。そのため、2つに分けてご案内します。
社会福祉法人が運営する老人福祉施設
社会福祉法人が運営する老人福祉施設の施設管理者になるためのハードルは、民間企業の施設管理者になるよりも高めと言われています。その理由について、みていきましょう。
特別養護老人ホームの管理者の資格要件
特別養護老人ホームにおいて、管理者として業務に取り組むためには、下記の資格要件が必要となってきます。
- 社会福祉主事の要件を満たす者
- 社会福祉事業に2年以上従事した者
- 社会福祉施設長資格認定講習会を受講した者
(基準省令第5条第1項)
業務内容に関しても、
- 介護保険サービスの質の管理
- ケアスキルの向上
- 必要なサービスの開発、拡大、これらを支える人材の育成
と、明確に定義されています。
介護老人保健施設管理者の資格要件
次に、介護老人保健施設において、管理者になるための資格要件ですが、介護保険法において、下記のように定義されています。
介護老人保健施設の開設者は、都道府県知事の承認を受けた医師に当該介護老人保健施設を管理させなければならない。
※ 都道府県知事の承認を受け、医師以外の者に管理させることができる。
(介護保険法第95条)
つまり、介護施設の管理者は、「都道府県知事の承認を受けた医師でなければならない」という条件が基本といえます。
ただし、「医師でなくても特別養護老人ホームや養護老人ホームの施設長など、老人福祉に関して相当の経験および熱意を有している者、介護老人保健施設の管理者としてふさわしいと認められる者」ともあります。
そのため、介護施設の管理者経験が豊富な人だと、介護老人保健施設の管理者に就ける可能性はあります。しかしながら、元々の条件が厳しいので、ハードルは極めて高いと言えます。
グループホーム管理者の資格要件(地域密着型サービス)
最後に、介護保険とは関係のない施設の例として、グループホーム管理者の資格要件について見ていきます。法的に定義されている条件は下記の通りです。
- 認知症である者の介護に従事した経験が3年以上あること。
- 認知症介護実践者研修を修了して、認知症対応型介護管理者研修を受講していること
- 介護福祉士などの国家資格を有した仕事に5年以上従事し、相談業務の実務経験が3年以上あること
「グループホーム」は介護保険施設ではないため、管理者の条件も、介護保険施設である「特別養護老人ホーム」や「介護老人保健施設」に比べ、若干緩い条件となっています。
民間企業が運営する老人福祉施設
民間企業が運営する老人福祉施設には、有料老人ホームやサービス付高齢者向け住宅などがあり、社会福祉法人が運営する施設と比較すると、ハードルは低めです。
民間企業が運営する老人福祉施設の管理者の資格要件
有料老人ホームやサービス付高齢者向け住宅の管理者になるために必要な条件は、法的には特に指定されていません。そのため、介護の経験がなくても、施設管理者に就任することができます。
実際の求人例を見ても、
- 介護福祉士、ケアマネージャーの有資格者優遇
- 3年以上の実務経験者優遇
というように、有資格者や実務経験者を希望してはいるものの、必須条件とはしていないところがほとんどです。
有料老人ホームやサービス付高齢者向け住宅における管理者の業務内容は、現場の介護サービスに関わるものよりも、人材確保、入居者の確保、運営に関する業務といったものが主体となっています。
下記に、管理者の代表的な業務内容をまとめていますが、介護の専門職というよりは、事務職の比率が高い仕事だといえます。実際に現場で介護サービスに携わることはまずないため、現場の経験がなくても実際に勤めることが出来るポジションです。
【管理者の業務内容】
- 事業所の管理業務
- 入居者募集
- 入居状況の把握と計画、面接
- 医療機関等の協力体制の整備
- 職員の管理、募集
- 地域役員との連携
施設管理者の給与水準
介護施設における施設管理者の給与は、施設によって大きな差があります。運営母体によっても違いますし(社会福祉法人 or 民間企業)、運営母体が同じでも、会社規模やトップの考え方によって違ってくるのが現状です。
年収の幅は大変大きく、介護職とほとんど差がない年収400万円程度から、高額なところでは年収1,000万円以上といった施設もあります。高収入だから採用条件が厳しいというわけでもないので、積極的に応募してみることをオススメします。
施設管理者になるためのポイント
勘違いされる人が多いのですが、現場の介護と施設の管理というのは、全くの別業務であり、介護サービスに長けているからといって、施設管理も同じように上手く出来るとは限りません。
これは施設側も理解しているので、採用時においては、介護業務に精通していることを絶対条件とはしていません。介護の知識は仕事に就いてからでも習得することが出来ますし、現場は介護主任やケアアドバイザーなどに任せるというやり方もあります。
施設管理者にとって最も必要とされる能力は、希望する介護施設の入居者や介護スタッフをどうまとめていくかというマネジメントスキルです。また、施設の方針などをスタッフに説明して、現場に反映させていくことも重要であり、そのためには説明能力(プレゼンテーション能力)が必須です。
また、施設の方針を的確に実行しようとする努力と熱意を持つことも必須です。こういった人間性も管理職として人を率いるためには、必要不可欠な要素となります。
そのため、施設管理者になりたいのであれば、日頃から上司の仕事振りをみて、勉強することを心がけてください。施設管理者を目指しているということを上司に伝えておくことも重要です。意思を伝えることで、それとなく管理業務に触れる機会を作ってくれたりします。
こんなふうに、実際の現場において働きながら学ぶOJTが最も効果的な方法なので、常日頃から積極的に関わるようにしてください。
また、施設管理者として必要なスキル・知識を身につけるための研修制度が存在します。管理者経験が無い人にとっては、貴重な機会となるので、こういった研修に積極的に参加するのもオススメです。