介護施設の規模によって、働きやすさや待遇面に違いが出てくる

介護事業を展開している事業者の母体は、社会福祉法人、医療法人、NPO(非営利組織)法人、民間企業など様々ですし、介護サービスの施設規模に関しても、定員が100名を超えるような大規模施設から、10人以下の小さな施設まで、幅広くなっています。

 

介護施設の規模による働きやすさや待遇面の違い

 

大きな施設と小さな施設では、労働環境や待遇面に違いが出てきますし、介護スタッフに要求される資質や能力も変わってきます。それぞれ、メリット・デメリットがあるので、介護サービスの規模にスポットを当てる形で、両者の違いについて、まとめてみます。

 

なお、その時には、事業母体にも注意する必要があります。民間企業と福祉法人では、介護職員の待遇面などが全く違ってくるからです。施設規模と同様に、事業母体の違いも重要な要素なので、民間企業と福祉法人に分けて見ていきます。

 

民間企業が運営する小規模施設では、主体性がポイントとなる

民間企業の場合、介護が本業というよりも、別に本業を持ちつつ、介護業界に新規参入しているというケースが少なくありません。

 

介護サービス事業は走り始めという場合、介護業界のなかでは、シェアが低い小さな会社だったとしても、主体になっている一般事業が大きな企業だと、介護職の待遇は、業界のなかでも好条件になっていることが多いです。

 

ただし、介護サービスのノウハウが乏しいため、一人一人のスタッフの力量に追う部分が多く、介護士として自立して働けるような人でないと、なかなか勤まらないと考えてください。働きながら介護保険などのノウハウを学ぶといったことも必要になっていきます。

 

会社からの指示に沿って働くという受け身の働き方でなく、自発的な働き方が求められますし、会社をより良くしていくためへの創意工夫も必要となります。大変かもしれませんが、それだけ自分を高められる環境が整っているとも言えます。

 

会社も、そういった社員を積極的にフォローする傾向にあるので、介護とは違う間接的なビジネス研修(自己啓発、リーダーシップ、マネジメントなど)への参加をサポートしてもらえたりもします。(参加費用を会社が肩代わりしてくれたりします。)

 

また、個人としての仕事振りが評価されるので、努力次第で、幾らでも昇給・昇格を手にすることが出来ますし、事業内の介護サービスについては、みんなで作り上げていくといった雰囲気があるため、自分が主体的に動けます。そのため、やりがいを持ちやすい環境とも言えます。

 

ただ、会社によっては、最終的な決定権は本社にあるというケースも多々あります。この場合、意思決定に時間がかかり、円滑に仕事を進めていくことが出来ないといったデメリットがあるので、要注意です。

 

なお、民間会社で介護サービス事業だけを運営している小さな会社では、介護職員が助けあって業務を進められるメリットはありますが、介護職員の人数が少ないため、急な用事などでの休みがとりにくいといったデメリットがあります。

 

大きな民間会社の介護サービスは自分向上

一方、民間会社のなかでも、介護事業を大きく展開しているケースでは、どうでしょうか。こういった会社だと、介護サービスの運営ノウハウが確立されているので、仕事がしやすいと同時に、介護に必要な知識を素早く吸収出来るので、自分の成長にもつながるというメリットがあります。

 

また、有料老人ホームや介護付き高齢者向け住宅といった入所型施設の運営から、訪問介護サービス、通所型介護施設の運営まで、あらゆる施設形態で、事業を展開している企業も少なくありませんが、この場合、その会社で働くことで、幅広く情報を入手することが出来ます。

 

例えば、仮に自分が有料老人ホームで働いているとしても、訪問介護や通所介護の介護職員や看護師、理学療法士、栄養士など、自分とは違う専門の職員と接する機会が持てるといったことが普通にあります。

 

違う施設で働く人、違う職種の人と関わることは、自分の視野を広げることにつながりますし、違った専門分野の情報も得られるので、様々な知識を身につけることが出来ます。このような経験は、大きな規模で介護事業を展開している会社でしか出来ない貴重な経験となります。

 

また、同じ会社内での異動により、これまでの実務経験を踏まえながら、違う業態の施設に転職するといったことも可能なので、こんなふうに働いてみたいという自分の理想を叶えやすいというメリットもあります。

 

大きな会社だと、当然、給与も良いですし、福利厚生制度も比較的整備されています。また、一定数の介護職員が確保されているなど、1人当たりの業務負荷が妥当なレベルに抑えられているので、激務に追われることもありません。

 

このように、大きな会社には、何かとメリットが多いです。知名度が高い大企業で働くことを希望する人は、介護の世界でも多いのですが、これは極めて納得がいくことです。

 

小規模な法人は、アットホーム

続いて、民間企業ではなく、医療法人、社会福祉法人が運営する施設についてです。こちらも規模によって違ってきますが、まずは、単独で特別養護老人ホームなどの介護施設を運営している小さな法人の実情について見ていきます。

 

まず、同規模の民間企業と比較すると、安定している職場といえます。法人は、必要な介護スタッフ数が法律で決められているので、余裕を持った人員配置のなかで運営されていますし、規定の人数以上の職員を雇う傾向が強いので、さらに1人当たりの負担は少なくなります。

 

また、国や自治体からの補助金が運営費にあてられているため、有休や手当などについても、一定額は保証されています。民間企業と比較すると、基本給は安くなりがちですが、トータルで考えると、小規模法人のほうが良いと、勤務先に選ぶ人は多いです。

 

大規模な法人は安定したスキルアップ

次に大規模施設を運営する医療法人、福祉法人の実情です。特別養護老人ホームやデイサービス、ショートステイサービスなど、複数の事業を同時に展開している社会福祉法人。

 

もしくは、老人保健施設やデイケアなどの通所介護、訪問看護のナースステーションなどを併設している病院(医療法人)などが代表例となりますが、働くメリットとしては、民間企業同様、色々な専門職と関われること、安定した収入が期待出来るという二点につきます。

 

ただ、大きな民間会社と比較すると、介護職員の働く意欲は全体的に低い傾向があります。民間会社の場合、介護職員一人一人の実力を重視してくれますが、法人の場合、そこまでの実力主義ではありません。

 

向上心がある人、真面目に働く人を評価しつつも、それが給与や出世に連動することはありません。みんな、同じ待遇となるので、やる気がある人にとっては報われないと感じてしまうような状況です。

 

そのため、意欲が高い人ほど、働くことや自分自身のやりがいに行き詰まり、悩むことになってしまう傾向があります。それが理由で退職する人がいるという事実は、勤務先を選ぶ時に、頭に入れておいたほうがいいでしょう。

 

自分に合った施設の選び方

民間企業・医療福祉法人、小規模・大規模という絡みで、それぞれの施設ごとの違いを見てきました。それぞれ、メリット・デメリットが明確に存在しますが、では最終的に勤務先を選ぶ時には、どんなふうに判断していけばいいのでしょうか。

 

最後に、幾つか目安となる考え方をお伝えします。まず、現時点での収入は気にしない、それよりも、安定した労働環境のなかで、介護士としての自分のスキルを高めたいという人は、大規模な医療法人・福祉法人で働くことをオススメします。

 

また、介護士として、どんどん自分のスキルを高めて、昇給・昇格を手にしたいという人は、大規模施設を運営する民間会社のほうが、やり甲斐を感じやすいでしょう。

 

一方、アットホームな雰囲気のなかで、目の前の利用者とのふれあいを大切にしながら働きたいという人は、小さな民間会社、小規模法人を選択したほうが満足出来る可能性が高いです。

 

以上となりますが、今回の説明は、あくまでも参考の1つにしかすぎません。自分が介護の仕事に対して、何を求めているのか、将来像をしっかりと固めることが何よりも先決です。ここが明確になれば、自分が働くべき施設についても、自然に見えてくるはずです。