施設介護と病院介護の違い

介護というのは介護施設だけで行われるわけではありません。病院のなかには、介護病棟を併設、入院者の介護を行っているところもあります。ただし、介護施設と病院では、役割は大きく違います。

 

施設介護と病院介護の違い

 

必然的に、そこで働くスタッフにも求められることが異なってくることになるのですが、では、具体的には、どういった違いがあるのでしょうか。このページでは、施設介護と病院介護の違いについて、まとめていますので、参考にしてください。

 

生活の場であることが求められるのが施設介護

介護施設の一つである特別養護老人ホームでは、身体や精神的に著しい障害があるため、常に介護の必要な人65歳以上の高齢者が生活しています。

 

また、有料老人ホームなどの介護施設では、特別養護老人ホームに入所されている方と比較すると、やや健康的であるにしても、一定の介護が必要な方が入居されています。こちらも当然、全て高齢者です。

 

つまり、介護施設というのは、高齢者の生活の場であるということです。そのため、入浴、排泄、食事、見守りなど、日常的な援助を通して、入所者が普通の生活を送れるように支援していくことが、介護施設での介護職の大きな役割となります。

 

加えて、毎日のレクリエーションや、四季に合わせたイベントを行うなど、入所者が生きがいを持って生活を送れるよう働きかけていくことも、介護施設での介護職の大切な仕事となります。

 

介護をすればそれでいいということではなく、入所者が質の高い生活を送れように配慮することが必須であり、そのためには、何よりも入所者とのコミュニケーションが重要となります。従って、介護スタッフには、介護スキルだけでなく、コミュニケーションスキルが求められることになります。

 

治療を目的としている病院での介護職の仕事

このように生活の場である介護施設に対し、病院はあくまでも病気の治療を主目的とする場です。ただし、患者さんは介護の必要もあるので、介護と医療行為を同時並行的に行わなければいけません。

 

そのため、介護スタッフは、介護施設と同じように、排泄、入浴、更衣、食事、シーツ交換などの援助を行いつつ、治療行為をサポートする役割を担うことになります。

 

そのなかには、検査の時に、検査室まで患者さんに付き添ったり、入院患者さんの気分転換に車椅子を押して、外に散歩などに連れ出すといったことが含まれますし、看護師が使用したあとの医療器具の消毒など、医療業務に関しても、問題のない程度で、行うことになります。

 

病気の治療が第一の目的ですから、患者さんと接するのは、看護師が中心となりますが、看護師にとって、介護スタッフは頼りになる存在ですし、患者さんからみると、気を許せる人とみられることが多く、看護師と患者さんの間をつなぐといった立場に立つことも多々あります。

 

ただし、病院では治療目的という背景があるため、介護施設ほど、患者さんとのコミュニケーションを重視することはなく、レクリエーションの時間なども殆どありません。この点は施設介護と病院介護との大きな違いと言えます。

 

<介護療養型医療施設>
介護施設のなかにも、治療行為を主目的とする施設があります。それが、介護療養型医療施設です。要介護1以上の認定を受けた人のなかで、病状が安定期にあり、長期的な医学的管理やリハビリを必要としている人が利用する施設です。

自宅復帰を目指して医師や看護師、理学療法士が中心となって支援していますが、施設介護と病院介護、両方の要素が入っている施設と言えます。

 

看護助手は要注意、介護実務経験にならない

一般的な病棟の場合には、介護職は看護助手として働くことが要求されることもあります。その場合、医療業務を補助することがメインとなるので、介護職としての充実感は期待出来ないと考えてください。

 

また、病院にもよりますが、看護助手として仕事についた場合には、介護の実務経験とはみなされないケースがあります。これは、転職の際に重要な要素となってくるので、事前に病院側に確認しておくことをオススメします。

 

介護職としての知識・経験を積み上げる意味で、病院介護を選択するのであれば、認知症専門など、高齢者にかかわる病棟で働くことがベストです。なお、病院の認知症専門病棟では、介護施設での認知症ケアと医療機関が取り組む認知症ケアの双方に携わることになるので、介護職として、貴重な経験を積むことが出来ます。

 

施設介護と病院介護は給与も違う

働く側の人間として知っておきたい知識として、施設介護と病院介護では、給与体系が大きく違ってきます。

 

介護施設は民間会社や社会福祉法人によって運営されています。いずれも、給与水準は他業種と比較して低めです。(両者を比較すると、民間会社よりも、社会福祉法人が運営する施設のほうが、給与は高いです。)

 

一方、病院介護では、運営母体が医療法人となります。介護と医療を比較すると、医療のほうが国が定める報酬基準が高いため、同じ介護スタッフとして働いても、病院介護のほうが高い給与を得られるケースが大半です。

 

特に諸手当で差が付きます。基本給や時給については、施設介護も病院介護も、それほど大きな差はありませんが、介護施設の夜勤手当は平均4000円だが、病院介護だと10000円以上の手当が付くといったようなことが日常茶飯事で起きています。

 

手当の差は積み上げるとバカにならず、年収ベースで比較すると、100万単位で収入差が発生することもあります。

 

病院介護に昇進はナシ

病院介護は、施設介護に比べて高い収入が期待できますが、昇進は全く期待できません。病院は、あくまでも医療現場であるため、介護職が狙える役職はリーダーか介護主任というのが精一杯といった状況です。

 

その点、施設介護は低賃金ですが、介護職としての仕事を全うすることが出来ますし、腕次第では責任者や施設長を目指すことも可能です。

 

最近では、病院に老人病棟が増え、介護職の需要が高まってきていますが、キャリアという点では、一長一短があります。自分がどんな道に進みたいのかということを明確にしたうえで、介護施設が向いているのか、病院介護が向いているのかを考えてみることが重要です。